【パチンコ思い出話】その7. スーパーヤジキタ ~推定40代の女子高生~

こんにちは、あんにゅいです。

ホールに集う客は多様であり、そのファッションも千差万別です。

時には目を疑ってしまうくらい奇抜な出で立ちでホールを闊歩する客を見かけることもあります。

ユニークな衣装に身を包まれた客に、魂が消える思いをさせられたエピソードを今回は綴ります。

(C) 奥村遊機(モナコ)

スーパーヤジキタとは

スーパーヤジキタ(奥村遊機)は1996年に登場したデジパチです。

1/3で確変・2回ループのCR版の、現金機バージョンとして根強い人気がありました。

特筆すべきは、初当たり時1/8の抽選に通ると、以後5/8で次回大当たりまでの時短が継続する連チャンモードが存在したことです。

現金機ながら一発逆転の要素も備わっていたのです。

その代償として大当たり確率は1/247.6とやや低く、安定感は欠けていたかもしれません。

東海道中膝栗毛がモチーフということもあってか、年配客の比率が高めだったような記憶があります。

咳をしても一人

私は昔も今もソロ打ちを好むスタイルです。

複数人で組んで打つのはメリットももちろんあるのですが、デメリットも大きく自分にはあまり向かないと思っています。

しかし、ソロ打ちが好きだからとは言っても、ソロ打ちにもデメリットはあります。

ソロ打ちのデメリットの最たるものは、孤独感です。

たまにしかパチンコを打たないのであれば、一人きりになれるのですから孤独感どころかむしろ清々するくらいの気持ちになります。

しかし、連日連夜打ち続けるとなると話は別です。

開店から閉店までハンドルを握って液晶を凝視し、止め打ちしたり上皿に玉を入れたり下皿から玉を抜いたり、たまに箱の上げ下げをする程度の単純作業の繰り返し。

騒音に耐えながら隣から顔を舐めるように流れてくるタバコの副流煙を吸い込み、事務的に目の前に差し出されるコーヒーレディのメニューを無反応でスルーするだけの一日。

これがずっと続くと、神経は確実に削られていきます。

勝っているのならまだいいですが、負けた日の神経の衰弱っぷりは半端なものではありません。

学生時代のある日、春休みに一ヵ月以上ホールに通い続け、その間人間らしい会話をまったくしていなかったことにふと気が付きました。

そしてその夜、風邪だったのでしょう、高熱が出てしまいました。

身も心もすっかりやられ、朦朧とした意識の中で熱に浮かされながら、孤独感から涙を流してしまったあの体験は、もう二度としたくありません。

そうだランチ、行こう

閉店前のホールで、景品カウンターで特殊景品を受け取った私は、換金所の前にできている長蛇の列の最後尾に並びました。

私は疲れ果てていました。

持っている特殊景品を換金すると、15,000円くらいにはなります。

しかし、今日使ったお金は約30,000円。

スーパーヤジキタで1,000円30回転超えの台を発見し、ここ数日それを追いかけていたのですが、どうにも結果が出ず対スーパーヤジキタではトータルでマイナスでした。

そして、今日もマイナス。

比較的安定しやすい現金機とは言え、数日程度で結果が出るわけはありません。

それはわかっているつもりでしたが、自らの神経を犠牲にして打っているのに負けているという現実に、疲弊を隠すことは困難でした。

ただの八つ当たりですが、演出が外れるたびにいちいち大袈裟に泣いてみせるヤジさんとキタさんが、やけに癇に障るようになってしまいました。

少し休んだ方がいいのかもしれない。

そんなことを考えながら自分の換金の番が来るの待っていたら、「おまたせ~!」という台詞とともに、セーラー服を着た女性が横から割り込み私の一つ前に並んでいるおじさんの腕に絡みつきました。

ん、セ、セーラー服!?

私の意識はその女性に向きました。

この場でセーラー服はふさわしくないはずなのです。

パチンコ屋は18歳から入店可能ですが、高校生は出入り不可ということになっているからです。

私は軽くパニックになりましたが、その女性の顔を見てすぐに合点がいきました。

その女性の年の頃はおそらく40代。

私の2倍以上もの齢を重ねていると判断したからです。

私はもう、目の前の二人に興味津々です。

このおじさんと女性はどういう関係で、そしてこの女性は一体何者なのだろう。

この女性は夜の関係のお仕事をしていて、その都合で女子高生のコスプレをして登場した、といったところ、なのかな。

40代のなんちゃって過ぎる女子高生が現れたことで、その場はにわかに異様な雰囲気に包まれました。

しかしそれは不快なものでは決してなく、むしろ微笑ましい空気さえ醸し出しています。

二人の換金の番がやってきました。

そして換金を終えた二人は、大胆に腕を組みながら、またねっとりと指を絡ませつつ恋人つなぎで手を取り合いながら、駐車場の方へと消えていきました。

あの二人の人生は、きっと楽しいだろうな。

やりたいようにやるという人生。

それは「俺は私は今を生きています」と、如実に彼らの表情に表れていました。

それに引き換え、私は何をやっているのだろう。

辛い思いをしてパチンコを打って、お金を失って。

私の人生の目標は、パチンコやお金ではないはずなのに。

そうだ。

この後、久しぶりに友人に連絡してみようかな。

都合がついたら明日にでも、たまにはゆっくりとランチでも行こう。

そう考えながら、私も換金を終え、足早に帰路に着きました。

【パチンコ思い出話】シリーズの記事は下記の通りです。