こんにちは、あんにゅいです。
資産運用の手法として、インデックス投資があります。
このインデックス投資で、「投資したお金はどれくらいまで減る可能性があるの?」と疑問になりませんか。
この記事では統計学の観点から、起こり得る範囲で、運用資産がどこまで下落するのかアプローチをしていきます。
目次
これくらいまで下がる可能性がある
株式のインデックス型の投資信託を100万円買っていた場合、1年間でこれくらいまで下がる可能性があります。
【一般的な基準で見積もると】
100万円 → 49.5万円
【かなり厳しく見積もると】
100万円 → 29.9万円
後者の100万円 → 29.9万円は相当に厳しく見積もっていますが、計算上は1年間でここまで下がるかもしれないのです。
根拠
ではその数字の根拠はどこからくるのでしょうか。
ここでは統計学の力を借りて、計算をしています。
ちなみに、金額を推計する方法は複数通りありますが、「絶対にこれが正しい」というものは存在しません。
あくまでも、複数ある計算方法のひとつで算出した数字であり、必ずこの通りになるというものではないことをご承知おきください。
次項から、その考え方をご紹介しますね。
株式のリターンとリスクから考える
リターンとリスクとは
金融商品にはリターンとリスクという考え方があります。
リターンとは期待できる収益率のことです。
例えば、
リターンが5%
と言った場合、「1年間で5%増える」、すなわち、
1年間で100万円が105万円になることが期待できる
ということです。
続いてリスクについてご説明します。
言葉の響きから、なんとなく「下落する危険性」のような印象を受けますが、金融の世界では少し意味が異なります。
リスクとは、将来のリターンの不確実性のことです。
例えばリターンが5%だとしたら、その5%の通りにならないバラツキの度合いを指します。
リターンが5%なのに、実際には-5%になってしまうのもリスク。
反対に15%になってしまうのもリスクです。
リターンの通りにならないことがリスクなんです。
だから、リスクとは下落することを指す言葉ではないんですね。
リターン(期待できる収益率)を中心として、上や下にバラつく度合い
これがリスクです。
このリスクは、標準偏差という概念で表されます。
この標準偏差の値が大きいほど、リスク(リターンの不確実性)が高いと考えることができます。
一般的な尺度での最悪の事態を想定する
ここでは、株式のリターンは6%、リスクは20%として計算します。
日本の公的年金を運用しているGPIF(Government Pension Investment Fund)の試算では、国内株式のリスクを22.5%、外国株式のリスクも22.5%としています。
しかし、国内株式と外国株式を組み合わせることで、リスクはこれらの22.5%よりも低くなると考えることができます。
わかりやすくするためにも、ここでは株式のリスク(標準偏差)を20%とします。
そして、株式のリターン(期待収益率)を6%とします。
リターンについても諸説のある部分ですので、6%は正確な数字ではありません。
世間では大雑把に、株式のリターンは5%~7%くらいと言われることがあるので、ここでは真ん中の6%を採用します。
これらを基に計算をしていきます。
金融の世界では一般的に、標準偏差の2倍を見れば、最悪の事態を想定することになります。
標準偏差の2倍を見ると、95.45%の確率でリターンがその範囲に収まります。
残りの4.55%の事態はまあ起こらないだろうとして想定しない考え方です。
20%という標準偏差を2倍すると40%(20% × 2)です。
そしてリターンは6%。
この6%を中心として、上や下に40%バラつくと考えます。
どのくらいの範囲でバラつくかと言うと、-34% ~ +46% です。
この下限である-34%を最悪の事態とします。
まとめますね。
・リターン(期待収益率)を6%、リスク(標準偏差)を20%とする
・標準偏差を2倍する → 20% × 2 = 40%
・バラツキの下限(最悪の事態)を計算する → 6% – 40% = -34%
・一般的な基準(95.45%の確率)で、1年間で最悪の場合-34%まで下落する
為替変動リスクから考える
ここでは、1ドル110円を基準に、為替変動リスクを考えます。
インデックス投資では、国内の株式だけではなく、広く世界中の株式に投資をします。
海外の株式を日本円で買うのですから、為替が変動するリスクを負うことになります。
円の価値が上がれば(円高)、資産は減少しますし、円の価値が下がれば(円安)、資産は増加します。
一般的に、株式市場が下落相場になると、比較的安全な通貨である円が買われて、円高の傾向になります。
株価の暴落時は円高になる可能性が高いのです。
円高というのは、ある地点の為替レートを基準に考えるものです。
このレートだったら絶対に円高とは考えません。
ここで大切なのはどの地点を基準とするかということです。
ここでは、記事執筆時(2020年3月14日)の直近3年間のドル円為替レートを基準にします。
証券会社のチャートを見てみると、直近3年間では概ね105円~115円を推移しています。
わかりやすくするために、110円を基準にして計算をします。
世界的な金融危機であるリーマンショックの後、2008年~2013年まではドル円の為替レートは80円~90円で推移しました。
これは異常な円高と言われています。
金融危機が起こると、これくらいまで円高が進む可能性があるのです。
これにならうと、株価暴落時にはここまで円高になることを想定する必要があります。
例えば円高が25%進むと、110円だったレートは82.5円になります。
80円~90円の範囲に収まっていますね。
このくらいの円高は想定するべきですので、暴落時には円高が25%進むと考えます。
前項で、株価は1年間で最悪の場合-34%まで下落するとしました。
ここに円高が25%進みます。
34%減ったところにさらに25%減るので、トータルで50.5%減ることになり、保有していた資産は49.5%になります。
記事の最初の方で、100万円が49.5万円になると書いたのは、これを基にしています。
まとめますね。
・株価の暴落時、円高は25%進む可能性がある
・株価の下落で34%減少した資産が、為替変動で更に25%減少する
・計算すると (100% – 34%) × (100% – 25%) = 49.5%
・為替変動リスクを考慮すると、一般的な基準(95.45%の確率)で、1年間で最悪の場合、資産が49.5%になる
もっと厳しく計算するとこうなる
上記の計算方法(標準偏差を2倍)だと、4.55%の確率でそれよりも大きくバラつくということになります。
それでは不安だという場合には、もっと厳しく見積もればいいです。
具体的には2倍にしていた標準偏差を3倍にします。
標準偏差を3倍にすると、99.73%の確率でその範囲に収まります。
2倍の標準偏差では95.45%
だったのが、
3倍の標準偏差では99.73%
になります。
これならかなり心強いですよね。
そして円高の進行を25%から35%に引き上げます。
実際に円高はドル円で75.54円まで進んだことがありますので、用心に用心を重ねます。
これらから計算すると、最悪の場合には、1年間で資産は29.9%にまで減少します。
記事の最初の方で、かなり厳しく見積もると、100万円が29.9万円になると書いたのは、これを基にしています。
まとめますね。
・標準偏差を3倍、円高の進行を35%とする
・リターン(期待収益率)は6%、リスク(標準偏差)は20%
・標準偏差を3倍する → 20% × 3 = 60%
・バラツキの下限(最悪の事態)を計算する → 6% – 60% = -54%
・54%下落したところに35%の円高進行
・計算すると (100% – 54%) × (100% – 35%) = 29.9%
・かなり厳しい基準(99.73%)で、1年間で最悪の場合、資産が29.9%になる
まとめ
株式のインデックス型の投資信託を100万円買っていた場合、1年間でこれくらいまで下がる可能性があります。
【一般的な基準で見積もると】
100万円 → 49.5万円
【かなり厳しく見積もると】
100万円 → 29.9万円
この記事で扱った考え方では、最悪の場合、このくらいの資産の下落を想定しないといけません。
でも言い方を変えますと、これを超える下落はまず起こらないと考えていいです。
もちろん可能性はゼロではありませんが、そこまで心配し始めると、「空が落ちてきたらどうしよう」という杞憂に近いレベルになってきます。
そして、標準偏差20%というのは、株式のみでポートフォリオを構成した場合の話です。
債券といったリスクが小さめの資産をポートフォリオに組み入れれば、標準偏差はもっと小さくなります。
そうなれば下落しうる金額・割合も、もっと小さくなります。
最悪の場合、この数字になる、という話なのです。
不必要に心配し過ぎることのないようにしましょう。
ですが、ご自分のリスク許容度(どのくらいの下落に耐えられるか)を考えるとき、この数字は目安にして頂きたいです。
暴落が起きたときに、想像以上に資産が減少して、パニックになってファンドを手放してしまうのは、勿体ないことです。
「最悪の場合ここまで損失が出ることもある」
そう心づもりをして、暴落も想定し、どっしりとした心構えで、健全なインデックス投資生活を送っていきたいですね。